IC-375にIFDモジュールを組み込む
IC-375(ICOMの430MHzオールモード機)にSymek社のIFDモジュールを組み込んで、AO-51(AMSAT Echo)の9600baudを超える高速デジタルダウンリンク(38,400baud等)を受信する実験です。
なお、慣例に従って、本ページでは 9600bpsのことを 9k6、38,400bpsのことを 38k4と書くことがあります。
実験に使った機材、ソフトウェア等は次のとおり
リグ |
ICOM IC-375 |
モジュール |
Symek社のIFDモジュール |
TNC |
Symek社のTNC-3S |
今回の実験台になったIC-375
このリグには今回の改造以外にも色々と改造を加えていまして、例えば9600baudのFSK受信用に 455kHzのフィルターをBタイプのもの(ムラタのCFW455B)に交換して、FM復調器のIC(MC3357P)から信号を取り出しています。今回のIFDの組み込みによって、このリグ1台で 1200〜76k8 の受信が可能になります。
Symek社のIFDモジュール
IC-375は、JA国内では430MHz帯機として知られていますが、海外ではEUやWのようにアマチュアバンドに220MHz帯の割り当てがある国がある
ため、それらの国では IC-375は 220MHz帯機、そしてIC-475が430MHz帯機になっています。そのため、Symek社からIFDモジュールを購入するときは IC-475用と指定するとよいでしょう。もっとも、Symek社のWebに載っているIFDモジュールの対応機種一覧には、IC-375がありませんので、間違って220MHz機用を購入してしまうことはありません。
それから、IFDモジュールには、帯域幅が異なる3タイプがあります。標準タイプは帯域110kHz(速度76kbaudまで対応)、
その他にナロータイプ(帯域80kHz 、38k4まで対応)とワイドタイプ(帯域300kHz 、153k6まで対応)がありますので、必要に応じてタイプを指定することができます。
私の作業記録
ここからは、IFDモジュールに付属してくる取説の内容に沿って、私の作業記録を紹介します。参考にご覧ください。
取説は英文なので、それよりはこの記事の方がお役に立つことと思います。
総合結線図
今回の作業で行う全体の結線図です。この図のpdf版はこちら
Symek社から届いたIFDモジュールのパーツ一式
左上の基板が IFDモジュール本体、その手前は接続用端子(4ケ)、配線用の細い同軸ケーブル
YGRボードの取り外し
リグの底面カバーを取り外し、フロントパネルを手前側に置くと、右側1/4くらいの面積を占める基板がYGRボードです。
このボードのパターンを1箇所切断して、そこにIFDが割り込む形になるように信号を引き出してIFDへ供給し、IFDから出た信号をまたYGRボードに戻すわけです。
取り外したYGRボード
このボードを取り外すには、細い同軸のソケット4箇所(J3,J4,J2,J7)と、メインボードに伸びているソケット(J15)、4芯のテープ状の配線のソケット(J1)、更にボードをシャーシに固定しているネジを5箇所外しました。
部品面でL1とL2を探す
ボードの部品面で、L1とL2を探します。写真のようにシールドケースの手前側にあります。このとき、シールドケースの向こう側にも同じように並んだ2つのLがありますが、間違わないように。
パターンカットする箇所
次にYGRボードを裏返して、パターン面でL2とL1を結ぶ1本のパターンを見つけます。このパターンは、写真のように、シールド板の近くにあります。このL2からL1に向かう1本のパターンを、できるだけ鋭利なカッターナイフ等で切断します。赤い×印がカットする箇所です。
配線の引き出し
カットした両方のランドに、50オームの細い同軸で引き出し線を取り付けます。私の場合は、手元にあった0.8QEVを使いました。同軸の網線は、手近なアースポイントにハンダ付けしておきます。アースポイントの選び方が不適切だと、YGRボードをケースに納めた後で同軸の芯線が引張られて、ランドを引き剥がしたり、断線の原因になりますので、慎重に作業しましょう。
この後、L1側のランドから引き出した方は、IFDの RF Outに、L2側のランドから引き出した方は IFDの RF Inに接続しますので、この段階で2本の同軸に何らかのマークをつけておくとよいでしょう。
この作業の問題は同軸の長さをどのくらいにするか、ということです。IC-375の中にはIFDを押し込めるようなスペースがないので、私の場合は体裁はよくないですが、長目の同軸でIFDをIC-375のケースの外に出しています。
13.8V の取り出し
IFDの電源として ACCソケットのピン7から+13.8Vを引き出しておきます。
IFDモジュールへの結線
IFDモジュールへの接続は、RF In, RF Out, DATA Out,電源の4箇所です。私の場合は、IFDモジュールをIC-375の外部に持ち出したので、この段階ではまだ DATA Outには結線していません。RF-In, RF-Out, 電源の3本を接続した状態で、IFDモジュールを搭載した状態での調整を行います。
調整
まず、慎重にIC-375の電源を入れます。435MHz付近の信号で、Sメータが半分ほど振れるくらいの信号を探します。そして、Sメータの触れが最大になるように、L1とL2のコアを回して調整します。コアは脆くて欠けやすいことと、絶縁性のものでコアを回したほうが調整がとりやすいので、私は割り箸の先をカッターナイフで削って小さなマイナスドライバーを作り、それでコアを回しました。
続いて、L1&L2の隣にあるL11も、同様にSメータが最大になるように調整します。L11の調整はL1&L2よりもごくわずかで済むはずです。
調整は以上です。
作業完了
このあと、IC-375の底面カバーを元どおりに取り付けます。IFDの出力 DATA Outを TNC(正しくはモデムと言うべき)の復調信号入力に接続します。今回、私は Symek社の TNC-3Sを使いましたので、モデムのピン4(Demod)とピン2(GND)にシールド線でつなぎます。
写真は、私のシャックで永らく9600bpsFSK用TNCとして奮闘酷使してきたTNC1296と、その上に乗せたTNC-3Sです。
TNC3Sのリアパネルです。モデムとの接続は5ピンのDINコネクターです。ピン2はGND、ピン4が復調信号の入力端子です。
受信にはこれだけで十分ですが、この他のピンは、ピン1がリグへの変調信号の出力、ピン3はPTTになっています。ピン5は未使用です。
それから、8ピンのDIP-SWが見えていますが、私の場合はSW1〜3を Up,Up,Dwn にしてRS-232Cを57.6kBに、またSW4〜8を Dwn,Up,Dwn,Dwn,Dwnにして常時KISSモードにして使っています。
IFD関係のリンク集
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last update: Oct 14, 2004
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